
少し風の強い夕方。
いつもの通り散歩へ行く。
いつもの散歩コース。右手には田植えを待つ田んぼ。左手には野草が生えた畑。その間の道を歩いていく。太陽はもうすぐ沈んで、気温も下がって暗くなっていく。
でも俺の足取りは軽く、幸せな気持ちでいっぱいだ。
大好きな時間。夕方の飼い主との散歩の時間。
ぼくは黒毛のシバ犬。現在、10歳、あと2ヶ月くらいで11歳になる。体重は15キロほど。
見た目はやや(?)ぽっちゃりしている。
11歳は犬の年齢ではもう老犬になる。運動量は落ちたし、寝る時間も増えた気がする。老犬と言われれば老犬なんだろうな。でも、自分で歩いて散歩へ行けるし、食欲もある。
ぼくたち犬は、老犬と言われる歳になっても、体力つけよう、筋トレー!とか、若見え、アンチエイジングー!なんてことはしない。生きていれば歳は取る。誰だって老いていく。当たり前のこと。
ぼくたちは、ただ今を生きてる。今を幸せになるように生きてるだけ。生まれて、今を生きて、そして命が尽きれば空へ旅立っていく。それだけだ。
ぼくは黒毛のシバ犬。ぱちっと開いた輝く瞳、散歩している時には、通りすがりの人に、可愛い、とか、イケワン、と言われたりする。
そういってくれる人も、やはり自分の飼い犬の方が可愛い、と思っている。犬が好きな人は、犬を見たら、可愛い、と言ってしまうように思う。
色んな犬がいて、色んな人間がいて、色んな飼い主がいて、人(犬)それぞれ、人(犬)の思いは99通り以上あるように思う。
ぼくたち犬の世界は、シンプルで、人の世界ようにややこしく複雑ではない。
大好きな仲間と、飼い主と一緒にいて、散歩に行ったり、遊んだり、撫でてもらったり、大好きな飼い主や仲間との時間をとことん愛する。
感情だってもちろんある。撫でてもらって嬉しい、ご飯を食べて幸せ、散歩に行って楽しい、怒られて悲しい。命があればどんな生き物も一緒だろう。生きている、置物やぬいぐるみではない。
飼い主の見た目や、太っている、モデル級スタイル、イケメンだろうが、ブサイクだろうが、経済状況や、大金持ちだろうが、貧乏だろうが、そんなことは全く気にならない。
ぼくたち犬は飼い主をただ愛してるだけ。
愛する人と、一緒にいられれば、幸せ100点満点なのだ。他のことはどうでもいい。
もしも飼い主が、何か失敗して怒られてひどく落ち込んだとしても、みんなに馬鹿にされるような恥ずかしいことがあっても、帰ってきたら最高の笑顔で玄関まで走って迎えにいく。
何度も言うが、そんなことはどうだっていい。ただ一緒に居れる時間を愛してる。
ぼくの飼い主は優しかった。でもふと顔を見上げると暗い表情をしてることが多かった。なぜ暗い表情なのかは分からない。そんな時は部屋の中に転がっているぼくのお気に入りのおもちゃを飼い主のところをへ持っていって、しっぽをブンブン振りながら渡す。すると暗い表情から一変して、笑顔でおもちゃを持ってぼくと遊んでくれる。
できるなら、一緒にいる人にはいつも笑っていてほしい。
一緒にいつも笑っていたい。

